音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、毎年12月に自身がプロデュースする、大ネタをぶつけ合う贅沢な会についてお届けする。
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毎年12月に僕がプロデュースする「恵比寿ルルティモ寄席」は旬の演者による大ネタを4席ずらりと並べるのがコンセプト。
2014年の第1回は桃月庵白酒『芝浜』/三遊亭白鳥『隣の町は戦場だった』/柳家三三『富久』/橘家文左衛門『文七元結』、第2回は春風亭一之輔『芝浜』/三遊亭兼好『富久』/白酒『井戸の茶碗』/文左衛門『子別れ』、第3回は兼好『ねずみ』/一之輔『文七元結』/白酒『二番煎じ』/(文左衛門改め)文蔵『芝浜』。このコッテリ感は半端じゃないが、年に一度くらいこういう会があってもいいと思っている。
僕は、二人会や三人会をプロデュースする際には「こしら・一之輔」とか「こしら・萬橘・馬るこ」とか、組み合わせの妙にポイントを置くが、このルルティモ寄席は、今はなき「東横落語会」の再現を目指している。1985年に終了した「東横落語会」は小さん、志ん朝、談志、圓楽、小三治らが大ネタをぶつけ合う贅沢な会で、これに通ったことで僕は落語にのめり込んだ。
昨年12月18日に行なわれた第4回のトップバッターは三遊亭兼好で『紺屋高尾』。久蔵が自分は職人だと打ち明ける場面での「この3年、花魁に会えると思うと毎日が楽しかった。だから嘘でもいい、3年経ったらまたおいでって言ってください。その言葉を胸にまた3年、一所懸命働いて、誰よりも幸せに生きていけるんです」という台詞が胸を打つ。笑いの多い演出が爽やかな感動をもたらす珠玉の逸品だ。