風水に凝るのは中国人の特徴のひとつだが、「霊のパワー」は犯罪者をつき動かすきっかけにもなるようだ。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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罰当たり者というべきか、不届き者というべきか──。
北京の海淀区といえば有名進学学校や有名大学が集中する文教区であるのと同時に、IT関連の企業が集中する地域としても知られている。そんな海淀区で事件は起きた。
昨年末、海淀公安分局の蘇家垞派出所の警官は、区内のある寺院からの通報を受けて駆け付け、現場で賽銭ドロボウが捕まった。功徳箱(賽銭箱)を狙った男は、計4000元(約6万8000円)を盗んだという疑いで現行犯逮捕されたが、駆け付けた警官はその動機を聞いてあきれてしまったという。
というのも男は、「これから宝くじを買いに行く。そのお金が賽銭だったら当たる確率が高くなるから」と悪びれることなく説明したからだ。
その男によれば、「賽銭には霊のパワーが宿っている」。男は中学を出てから職を転々とし、ここ数年は仕事もなく、ただ宝くじを買い続けていたという。そんな人生の一発逆転を狙ったのが、賽銭パワーを利用する宝くじとは、何とも悲しい発想である。