東京五輪を睨んで都心部はいまだ、あちこちで再開発ラッシュが続いているが、五輪後の2020年以降に最も注目を浴びそうなのが、“湾岸ベルトライン”とでも呼べる新橋から品川にかけてのエリアである。
新橋駅はゆりかもめの起点でもあり、ニュー新橋ビルを含む再開発では野村不動産とNTT都市開発が名乗り上げている。次の浜松町駅も東京モノレールの起点で、羽田空港を結ぶ利便性もあって再開発が活発だ。
駅を挟んだ西側では世界貿易センタービルの後方ですでに高層ビルが全貌を見せ、貿易センタービル自体も2019年には解体、その後に新たなビル建設が待っている。一方、同駅の東側では東芝本社ビルの再開発が決まっており、野村不動産が高層のツインタワーを手がけることになる。
さらに隣の田町駅周辺は後述するとして、2003年に東海道新幹線の停車駅となり、2027年開業予定のリニア新幹線では始発駅となる品川駅。同駅は新幹線に加え、前述の浜松町駅よりもさらに羽田空港へのアクセスがいいことから、将来的には一大再開発エリアとなる可能性が高い。
同駅周辺の主な地権者はJR東日本や京浜急行電鉄、西武ホールディングスの3社で、この3社が再開発では鍵を握っている。そして、品川駅と田町駅の中間点に山手線新駅が新設される予定(2020年に暫定開業、2024年から本格運用)だが、この新駅周辺でもオフィスビルやタワーマンション7棟の建設が決定済みだ。
また、品川駅周辺はかつて“新三菱村”と称された時期もあった。三菱商事が先行して品川駅隣りの天王洲エリアで再開発を主導したほか、三菱重工業が2003年に品川のビルに本社を移転し、一時期は三菱商事の複数の部門が同ビルに入ったり(その後丸の内に本社ビルが完成して退出)、三菱自動車工業も2003年に田町から品川に本社を移転した時期がある。三菱自動車の場合、わずか4年後の2007年に再び田町のビルに本社を戻しているのだが、当時は同社の主力工場がある京都に本社を移転することも検討されたらしい。
そこで本題の田町駅である。同駅周辺に本社を置く企業と言えば、真っ先に名前が挙がるのは、ロケットビルという別称もあったNECのビルや森永製菓、それに三菱自動車あたりだったが、前述したように羽田空港との結節点となる隣の浜松町や新幹線も停まる品川駅に比べ、地味な印象だったことは否めない。
だが、結節点でない分、浜松町駅や品川駅周辺の新しい高層ビルに比べればオフィス賃料はやや低い設定のところが多いはず。それでいて、浜松町駅と品川駅の間に位置するアクセス的な利便性は今後、さらに注目される公算が高い。
つまり本社を置くロケーションとしては、よりコストパフォーマンスの高さが期待できるといえる。そうした理由も含めて近年、この田町駅周辺に本社移転をする企業がかなり増えてきているのだ。