今後、人間の仕事の多くはAI(人工知能)に取って代わられる。人間にしかできないと思われていたクリエイティブな領域もAIやロボットに置き換えられていくのだ。行政を司る役人はもとより、「立法」が本務たる国会議員さえ、その例外ではない、と大前研一氏は指摘する。
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国会議員の本務である「立法」は純粋にクリエイティブな仕事だが、自力で法案を作ることができる国会議員はほとんどいない。その理由は、そもそも能力がない上、日本の場合は明治時代からの法律がほぼ全部廃止されずに残っているため、新しい法案を作ろうとすると、古い法律の邪魔をしない領域のことを緻密に定義していかねばならないからである。
したがって国会議員は衆議院法制局や参議院法制局に全面的に手伝ってもらわない限り、法案を作ることができないのだ。しかも実力は行政機関である内閣法制局のほうが上だと思われているので、実際には行政府が議員立法の手伝いをすることが多い。
ならば、今ある法律をすべてコンピューターに入力し、AIに法案作りを任せてしまえばよい。そうすれば、新しい法案が既存の法律と矛盾するかどうかはすぐにわかるし、そもそも法律が存在しない領域を発見することもできる。また、他の先進国の法律も入れてAIにディープラーニングさせていけば、日本でも有効に機能する新しい法案のアイデアを見いだすことができるだろう。結果、法案を作ることができない無能な役立たずの国会議員は全くいらなくなるのだ。
オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授の予測によれば、いま人間がやっている仕事の約半分は、10~20年後にAIやロボットなどの機械に取って代わられるという。そうなったとしてもクリエイティブな仕事は残ると見る向きは多いが、もしかすると、それは間違いかもしれない。なぜなら、いまや小説の執筆や作曲などもAIのディープラーニングによって可能になりつつあるからだ。
進化を続けるAIが役人や政治家の仕事を奪っていけば、日本は「忖度」や「裁量」の余地がなくなり、もっと公平公正で合理的かつ効率的な国になるだろう。
※SAPIO2018年1・2月号