日本人の4人に1人が苦しむ花粉症の季節がやってきた。近年はさまざまな治療法が確立しているが、良かれと思って受けた治療に、思わぬ副作用やリスクが潜んでいることがある。
鼻の粘膜に作用することで花粉症を改善するとして注目されているのが、「ボトックス」による治療だ。
ボトックスは、猛毒の「ボツリヌス菌」を有効成分とする骨格筋弛緩剤で、顔に注入すると筋肉が細くなり小顔になるため、美容外科などでよく使われている。ボトックスによる花粉症治療を謳っているのも、美容外科や皮膚科が目立つ。
ボトックスを鼻腔に滴下し、鼻の粘膜に浸透させ、副交感神経を抑えることで、花粉症の炎症を抑える。即効性があり、3か月ほど効果が持続するという。しかし、ボトックスの販売元である製薬会社グラクソ・スミスクラインの広報担当者は、困惑しながらこう答える。
「我々は花粉症の治療でボトックスが使用されていることは認識していませんし、花粉症治療薬としての販売はしておりません」(広報室)
花粉症などアレルギー性疾患の患者を受け入れている、北品川藤クリニックの石原藤樹院長が説明する。
「医療の現場でボトックスは、腋の多汗症、顔面痙攣などの治療薬として使われているもの。しかし、副交感神経を抑えることで花粉症の症状が収まるため、自由診療として使われている。
ただし、鼻水は鼻に侵入した異物や病原体など、体がアレルゲンとして認識したものを体外に流し出す働きがある。それをボトックスで強制的に止めれば、異物を排除する機能が弱まり、感染症にかかるなど、副作用が考えられます」
メーカーの想定外の使用法のため、どれだけのリスクがあるのか、それ自体がわからない。
※週刊ポスト2018年3月2日号