がんや脳卒中、心筋梗塞を招く恐れもある「加齢性ストレス」は、仕事などによる強いストレスに晒されている現役世代に多い印象があるが、実はシニアのほうが受けているストレスが多く、原因も複雑多岐にわたるため本人が気づきにくいという。
では、具体的にはどのような人が「加齢性ストレス」に晒されているのだろうか。時には可愛い孫がストレスの要因になることもあるという。高齢者1000人に生活満足度を調査した辻川覚志医師がいう。
「突発性難聴になり、『何かいい薬はないか』と聞いてきた知人がいました。日頃から孫の進路まで熱心に心配し、私にもその話をよくしていた。突発性難聴は心因性であることが多いので『孫のことで思い悩むことをやめてみては』とアドバイスすると、症状が回復しました」
また、貯蓄が十分にあるがゆえにシニアも「加齢性ストレス」に脅かされることもある。内閣府の調査によれば、年収1000万円までは世帯年収が高いほど幸福感が高くなるが、1000万円を超えると頭打ちになる傾向が見られた。家族社会学が専門の中央大学文学部の山田昌弘教授が言う。
「収入だけでなく、貯蓄もある程度の額を超えてしまうと、なくなったら困るという心配や、資産管理を考えなければならないなど面倒なことが増える。ある程度、貯蓄がなければ安心できませんが、多すぎても余計な心配が増え、大きなストレス要因となりうる」
思いもよらないことが加齢ストレスの原因となる。
「これらと似たような経験のある人は、ストレスがかかっている可能性が高いので、注意する必要があります」(前出・辻川医師)
健康、お金のみならず、「ストレス」も老後を生き抜くキーワードになる。
※週刊ポスト2018年3月2日号