『あたし おかあさんだから』。こんなタイトルの歌が物議を醸している。この歌は、絵本作家の「のぶみ」さんが作詞で、NHK『おかあさんといっしょ』で11代目うたのおにいさんを務めた横山だいすけが歌うもの。歌のなかでは〈あたし おかあさんだから〉というフレーズとともに、育児に追われる母親の日常が描かれている。
この歌がネットの動画サイトで配信されるやいなや、「母親にがまんや自己犠牲を強いている」「子供にはとても聞かせられない」「なぜ父親が登場しないの」という批判が殺到した。
ツイッターでは、「あたしおかあさんだけど〇〇」とのフレーズが流行し、「あたしおかあさんだけど お酒飲むよ」「あたしおかあさんだけど 夜遊びいくよ」という“反論”ツイートがあふれた。
反響は芸能界にも及んだ。『ノンストップ!』(フジテレビ系)では、出産と育児を経験した千秋(46才)が「そうそう、わかるって思った。何でそんなにみんな怒ってるのかな」と共感すれば、独身の三倉茉奈(31才)は「お母さんになることを、私ちょっと無理かもしれないって思っちゃう」と打ち明けた。
思わぬ大炎上に、当初は「ママお疲れさまの応援歌なんだ」と釈明していたのぶみさんは謝罪に追い込まれ、曲は配信停止となった。
確かに世の中を見渡せば、今や「おかあさんだけど〇〇」は当たり前だ。厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2015年)によれば、女性労働者に占めるワーキングマザーの割合は68.7%。過去最高の数字となった。
一方で昔ながらの「寿退社」を選ぶ女性は減っており、リクルートの調査によれば、結婚と同時に退社を希望する者はわずか7.8%となっている。夫婦・家族問題評論家の池内ひろ美さんが指摘する。
「昔の日本では、伝統的に女性は結婚して子供を産むと“家族に尽くす”ことが求められました。でも今はお母さんになっても仕事や趣味、社会貢献ができるようになり、女性の選択肢が広まった。これは社会構造の変化や女性の社会進出が進んだことも理由ですが、最も大きいのは当の女性たちが家族に尽くすばかりでなく、“ひとりの人間”として生きることを望んだからです」
出産後も仕事や趣味を持ち続けて社会に復帰するお母さんたちは、総じておしゃれできれいになった。
◆今の母親は昔に比べ若々しいままでいられる
『VERY』(光文社)や『mama girl』(キララメディア)などのファッション誌でも“ママファッション”が大人気。出産して母親になっても女らしくいることが選べる時代になった。
「少子化」もその一因だと池内さんが指摘する。