【著者に訊け】黒野伸一氏/『国会議員基礎テスト』/小学館/1600円+税
酒場での何気ない会話が物語を生む。そんなことが作家・黒野伸一氏の日常には、本当に起きるらしい。
「ある時、担当編集者と飲んでいたら例の号泣県議の話になって、『国会議員にも適性試験を受けさせた方がいいよね』みたいなことを私がポロッと言ったのが、盛り上がったんです」
その名も『国会議員基礎テスト』は、とある番組が現役議員に課した抜き打ち試験が反響を呼び、ついには〈国会議員基礎テスト法〉の立法化に動き出す顛末を、栃木県X区選出のイケメン三世議員〈黒部優太郎〉と、元キャリア官僚の政策秘書〈橋本繁〉、さらに就職先が産地偽装問題で傾き、地元栃木で私設秘書の職を得た〈杉本真菜〉の視点で描く。
実はこのテスト、元々は優太郎の無知を暴き、自分が後釜に座ろうとした橋本の策略だった。しかし橋本が信念を貫き、人だけはいい優太郎も世間の荒波に揉まれる時、世のため人のためを本当に考える政治が、朧げながらも姿を現わす。
〈問一 政治とはなにか〉と、本書はそんな問いかけで始まる。第一章「基礎編」から終章「実践編」まで、Q&A形式で差し挟まれる基礎知識や蘊蓄が、ドラマと並行して読める趣向だ。