グラビア写真界の第一人者、渡辺達生氏(69)が還暦を迎えてから力を注いでいるのが、“人生最期の写真を笑顔で撮ろう”とのコンセプトで立ち上げた『寿影』プロジェクトだ。『寿影』とは、渡辺氏による造語で、商標登録されている。葬儀で使用される『遺影』の“遺”の文字には暗くて辛気臭いイメージがあると感じていた渡辺氏は、代わりにこれまでの人生を祝う意味を込めて、美しい響きを持つ“寿”を選んで命名した。
自然な笑顔を引き出すための架け橋となる宝物やお気に入りの一品を持ってきてもらい、それについての会話を交わしながら自然な表情を撮影する。萩本欽一氏(76)が持ってきた「一品」は、あのチャップリンとの2ショット写真だ──。
「チャップリンは嘘つきだ!」
47年前の1月28日、スイスのチャップリン宅に向かって怒鳴った欽ちゃん。極寒の中、尊敬する喜劇王に会いたい一心で門前で待ち続けた4日目。使用人の心ない対応が腹に据えかねて発した言葉だったが、その大声が運よく本人の耳に届いた。
「もじゃもじゃ頭で出て来たの。事情を話すと“よく来たね”と僕の肩に手を回してくれた。もう、涙が出そうになって、映画のままの人だと思ったよ」(萩本氏。以下同)
書斎に招かれ、庭を散歩した夢の時間は40分。写真は宝物だ。
「僕ね、ダメって諦めたことない。余計に面白がる。で、大体成功。努力を神様は裏切らない」