死者を弔い来世へ送り出す僧侶と、生者を治癒して現世に引き留める医師──正反対の立場にある2人の“リレー説法”が多くの人の心に響いている。奈良・薬師寺の山田法胤・長老(77)と、日本橋清洲クリニック院長の佐藤義之・医師(65)による「心と体の免疫」の説法だ。
東京・品川区にある薬師寺別院で毎月第4土曜日に開かれる法話会は、いつも超満員。2人が共鳴し合う「死生観」とは何か。その鍵は「心と体の免疫力」にあるという。
──2人で「免疫」をテーマに説法をされるようになったのはなぜでしょうか。
佐藤:私は長年、体の免疫に注目し、研究を重ねてきましたが、いくら体に気を遣ってもそれだけではなかなか病気を治めることが難しいとも感じていました。そう悩んでいたところ、多くの患者さんと触れ合うなかで感じたのが「心のありかた」の重要性です。
たとえば同じがん患者でも、心の持ちようによってその進行は全く変わってくる。病について考える際、「心の免疫」こそ大事なのではないか──そう考えていた時に出会い、感銘を受けたのが山田長老のお話でした。
山田:そうでしたかな。法相宗では「何事も心がすべてを決めている」という考えを教えの中心にしています。ある物事を前にした時、何をどう見て、どう感じ、自分をどう変えていくかはその人の心次第や、という考え方です。
たとえば「一病息災」と、よう言いますな。一つ病気があるほうが体に気を遣うので、病気知らずの人間よりかえって長生きできることもあるということです。