中国の麻薬汚染は深刻の度を増しているようだ。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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中国で“毒品”といえば麻薬を意味する言葉である。青少年への麻薬汚染の広がりは、もう10年以上も前から中国社会に重くのしかかる課題となっている。なかでも、地方における麻薬汚染の浸透は深刻の一言に尽きるようだ。
麻薬に溺れる者には二種類あるとされ、一つは金持ちの道楽として麻薬に手を伸ばすパターンであり、もう一つは貧困者が溺れるパターンだ。いずれも若年化が心配されてきたのだが、昨今の問題は、販売と製造に若年化の波が押し寄せ、同時にアンダーグラウンドの傾向が消えつつある。
分かりやすく言い換えれば、普通の人々が簡単に製造や販売に関わる時代が訪れているということだ。昨年末、それを象徴するニュースが中国を騒がせた。
発信元は『中国新聞ネット』である。タイトルは、〈1990年以降に生まれた女子、SNSグループで覚せい剤のつくり方を学ぶ グループのなかにはミャンマーへ行って研修を受けた者まで〉である。
まさに世も末だ。山西省呂梁市の公安が昨夏に摘発したグループを取り調べる中で明らかになってきた事実だという。
この犯罪グループは麻薬の製造・販売のほか、公文書や印章の偽造、わいせつ物の違法販売、ニセ薬の製造・販売、ネット賭博犯罪、個人情報への不正アクセス、密入国の手引きまでありとあらゆる犯罪に関与していたことがわかっている。
グループには資金提供者がいて、その援助の下で麻薬製造を学んでいたという。アンダーグラウンドの世界にも留学制度ができつつあるのだろうか。