警察庁の統計によれば、2016年度の「運転中のながらスマホ」を原因とする交通事故は1999件。うち死亡事故は27件起きている。事故総数は5年前から1.6倍に増えており、駅のホームでも「歩きスマホ」による転落事故が絶えない。
2015年6月に施行された改正道路交通法により、信号無視や酒酔い運転、安全運転義務違反など14項目を自転車運転の危険行為と定め、3年以内に2回摘発された者は、各都道府県による安全講習の受講が義務づけられた。
しかし、「ながらスマホ」による事故は増加の一途を辿り、危険運転行為の抑止効果は見えづらいのが現実である。愛知工科大学工学部名誉・特任教授の小塚一宏氏によれば、スマホを見ながら自転車を運転している時、人間の視野は通常の20分の1にまで狭窄しているという。
「人間は無意識のうちにさまざまな情報を目で追って認識しています。普通に運転している際は前方、左右と幅広く視線が動き、本能的に安全確認を行います。一方、スマホを見ながらの運転となると、小さな画面を中心に20~30cmの範囲しか見えなくなる。時速10kmと仮定しても、1秒で2.8m進む。画面を5秒見ていると14mも進んでしまうわけで、極めて危険です」(小塚氏)
かつて小塚氏は、駅のホームで学生にスマホを持たせて、ツイッターをしながら歩かせる実験をしたところ、すぐ横を通る子供にもまったく気づかなかったという。
「徒歩ですら、人にぶつかればけがをします。これが自転車ともなれば、もはや“動く凶器”といえるでしょう」(小塚氏)
昨今、電動自転車の普及が拡大したことも、事故増加の一因となっている。経済産業省の統計によると、2016年の電動自転車の販売台数は、前年比15.3%増の53万9529台。今や自転車販売全体の約1割を占めるまでに成長した。
ペダルに僅かな力をかけるだけでモーターが反応し、坂道も楽に登れる電動自転車は、足腰の弱った高齢者を中心に人気を博している。とりわけ高齢者の自転車事故は、こぎ出しの力が足りずに転倒するケースが目立ち、電動アシスト機能によって転倒を防ぐ効果もある。
だが、同時にそのスピードも問題視されてきた。道路交通法により、日本の電動自転車は時速24kmを超えた時点でモーターが停止するよう設計されているが、逆にいえば時速20kmまではたやすく加速できる。