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俵万智 『あたし おかあさんだから』歌詞に息苦しさ感じる

『あたし おかあさんだから』について語る俵万智さん

『あたし おかあさんだから』というタイトルの歌が物議を醸している。絵本作家の「のぶみ」さんが作詞で、NHK『おかあさんといっしょ』で11代目うたのおにいさんを務めた横山だいすけが歌うもの。しかし、ネットで母親にがまんや自己犠牲を強いているのではないかとの批判が殺到。のぶみさんは謝罪し、曲は配信停止となった──。

 歌人の俵万智さん(55才)は40才で長男を出産した。結婚せず、女手ひとつで長男を育てるという選択をした俵さんは、出産を機に人生が一変した。

「何もかもが初めての経験で、子供が中心の生活にガラリと変わりました。妊娠中からカフェインやお酒を飲まなくなり、好きな芝居も見に行けなくなりましたが、子育てを通してまた別の貴重な経験をすることができました。子供が笑ったとか、立ったとか、歩いたとかの些細なことでも、毎日感動が更新されていくんです。忘れないうちに短歌にしておこうって思います(笑い)」(俵さん)

 なかでも最も感動したのは、わが子が初めて単語をしゃべった時だった。

「離乳食でトーストを牛乳に浸したものを『パンだよ』と教えていたら、最初に『パン』ってしゃべったんです。舞台『奇跡の人』で三重苦のヘレン・ケラーがサリバン先生に『ウオーター』と初めてしゃべった場面のように、いや、それ以上に感動的でした」(俵さん)

 同じく“言葉”を仕事とする者として、俵さんは『あたし おかあさんだから』の歌詞について、こんな感想を抱いている。

「母親の我慢や自己犠牲を美化している感じがあり、その点は息苦しさを感じました。一方で、子育てとはそれほどまでに密な時間と努力を要するのもまた事実です。赤ちゃんを前にして、おっぱいの飲ませ方も、絵本の読み聞かせ方もわからない。何もかもが初めてのことばかりなので、最初から100%できるお母さんなんているはずがない。産んだから母親になるわけではなく、私たちは子供と過ごす時間のなかで、“少しずつ母親になっていく”のです。数多の苦しい経験を経て、“おかあさんになれてよかった”と結ぶところは、とてもいい。ここに説得力を感じるかどうかですね」

※女性セブン2018年3月8日号

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