高齢ドライバーによる事故が相次ぐ中、78歳の男性が起こした死亡事故は、“色々な意味”で注目を集めた。単に男性が著名人だったから、ではない。
男性は後期高齢者だが、世間では「矍鑠とした現役バリバリの辣腕弁護士」として通っており、“危うい運転をする高齢者”とは最も縁遠いイメージの持ち主だった。また、運転していた車は、事故防止の機能が高いとされる「最先端の安全機能」を搭載していた。
“慎重なベテラン運転手”と“最新の技術”の組み合わせでも重大事故を避けられなかったという事実は、今後も懸念が広がる「日本の高齢クルマ社会」に大きな教訓と課題を残した。
◆ブレーキ痕はなかった
2月18日の朝7時過ぎ、東京・港区白金の閑静な住宅街が騒然となった。弁護士の石川達紘氏(78)の運転する車が歩道に乗り上げ、歩いていた男性を巻き込んで道路脇の金物屋に突っ込んだのである。石川氏はかつて東京地検特捜部長などを歴任した法曹界の重鎮だ。事故が起きた時、店舗兼住居の2階で寝ていたという金物屋の店主が語る。
「大地震が来たのかと思うくらい、ものすごい衝撃音と振動でした。車が突っ込んだ店内は惨憺たる有り様。店の前のガードパイプと電信柱はグニャリとへし折れていました」
巻き込まれた37歳の男性は病院に運ばれたが間もなく死亡。運転手の石川氏は右足骨折で入院した。
「事故のすぐ後、現場でゴルフバッグを持った若い女性と会いました。石川さんとゴルフに行く予定だったそうです」(前出・店主)