10分1000円のバーバー(2014年4月に消費税が8%に上がってからは税込み1080円)で知られる「QBハウス」を運営するキュービーネットホールディングスが、3月23日に“4度目の正直”でついに株式上場を果たす。
同社の設立は1995年で、翌1996年11月、神田に第1号店をオープン。いまでは日常風景化しているが、QBハウスが持ち込んだ、洗髪や髭剃りなしでカットのみに特化、カット後の頭の毛クズは掃除機を改良した「エアウォッシャー」で吸い取るスタイルは、開業当時は画期的だった。
そのうえ、レジなしの自動精算機で機材も両替機能をつけずに格安仕入れ、椅子もリクライニング機能がないのでこれまた割安。店内にはトイレもなく、何より洗髪なしなので水回りの敷設工事が不要でコストも大幅に圧縮した。
出店場所も、駅のそばや商業施設内はもちろん、改札内店舗やサービスエリア、空港内にも進出していったのだが、QBハウスのビジネスモデルで格安料金以上にウケたのが、“10分”という時間の短さだったといっていい。前述したような出店場所が多いだけに、買い物ついで、あるいはサラリーマンのちょっとした空き時間のニーズをうまく捉えたからだ。
かつて、同社の創業者である小西國義氏はこう語っていた。
「昔は、床屋といえば1か月に1度、土曜か日曜に自宅近所の店に行って、結構な待ち時間があったでしょう。一方で、洗髪や髭剃り、マッサージまでは要らないと思う人もいるのに、それが床屋というものだと思われていました。でも、ウチのやり方なら仕事の合間にサッと済ませて、週末の余暇時間を有効に使ってもらえるわけです」
小西氏自身、タイム・イズ・マネーの合理主義者で、貴重な時間を節約したいという思いが強く、その意識がヒントとなって、時間節約型産業といえるQBハウスを生んだのだ。
こうして“安い・早い・シンプルなサービス”は瞬く間に市民権を得ていった。2017年の実績でいえば、国内の店舗数は542を数え、海外店舗もシンガポール、香港、台湾の3か国で116店舗まで伸び、昨年は米国のニューヨークに出店するまでになっている。
もちろん、開業から急成長を遂げていく過程では、理髪店業界のやっかみに起因する嫌がらせや行政サイドからの無理難題の注文などもあったが、消費者からの支持をバックにそうした苦難を乗り越えてきた。