「美帆だけじゃなくて菜那もいるんだぞって見せられた」。平昌五輪の新種目「マススタート」で金メダルを獲得した高木菜那選手(25才)の誇らしげな表情には日本中が目を細めた。
ご存じの通り、スポットライトを浴びてきたのはずっと妹・美帆(23才)。美帆は史上最年少15才でバンクーバー五輪に出場した「ザ・天才少女」で、菜那はいつも“美帆の姉”と呼ばれてきた。それだけに、金メダル2つという“妹超え”のお姉ちゃんの偉業はとりわけ涙を誘った。
同じ遺伝子を分け合っているのに、妹にどうしても勝てない──姉の内心はいかばかりだっただろうか。
「美帆さんが15才で五輪代表になってウエアが届いた時、菜那さんは無邪気にはしゃぐ妹を見て、『ウエアを燃やしてやりたい』と思ってしまったそうです。応援席でも日の丸は振っていたけど、心の中では『転べ!』。それを周囲に口に出してしまうほど菜那さんも追い込まれていたんでしょう」(スポーツ紙記者)
姉妹が同じスポーツを志すと、どうしても妹の方が優秀になりがちだという。姉と一緒に始めるパターンが多いので、幼い頃から研鑽を積めるうえ、姉が失敗するところを見て学べ、妹にとっては“近道”となる。浅田舞(29才)・真央(27才)の女子フィギュア姉妹も、真央の方が活躍した。姉が巻き返した「高木姉妹」と、競技をやめてしまった「浅田姉妹」。その差は何か。
「高木家では姉妹がそろった食卓でもスケートの話はほとんどしないそうです。一方、浅田家では向上心につなげるためか、本人たちの前でも姉妹を比べることが多かったそうです」(前出・スポーツ紙記者)
姉の舞はかつて『婦人公論』(2016年7月26日号)でこう語っている。
《母とたまに顔を合わせると、そのたびに「真央がこんなに一生懸命練習してるのに、あんた、何なの?」とか、「お願いだから真央に迷惑をかけないで」と言われるんです。しだいに、真央のことが憎らしくなってきた》
姉妹が第一線で同じ競技を続けるのは難しい。競争するからこそ飛躍的に伸びるが、身近なライバルの存在が大きすぎると超えられない壁にもなる。
「北海道出身の高木姉妹は高校を出ると、菜那は実業団に入って長野へ、美帆は東京の日体大へ進みました。そこで闘う相手は妹ではなく自分自身だと気づいたようです。一方、浅田姉妹は同じ大学に進学し、同じリンクで練習を続けた。高木姉妹は、比較されずに離れられる環境にいられたことが大きかったかもしれません」(スポーツライター)
同じ道を進むのも、あきらめるのもどちらも勇気がいること。姉妹だからこその強みやつらさも乗り越えて、ようやくつかんだからこそ、菜那の金メダルはより輝いて見えるのかもしれない。
撮影/雑誌協会代表取材
※女性セブン2018年3月15日号