北朝鮮の「微笑み外交」に乗じても、何ら果実を得られないことは、歴史が証明している。にもかかわらず、なぜ北朝鮮の術中に、文在寅政権は自ら嵌まるのか。韓国人ジャーナリスト・朴承ミン氏が深層を読む。
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前政権の南北軍事協議では北朝鮮代表らは、意見が対立したり、誤りを指摘されたりすると会議の途中に席を蹴飛ばして出ていく場面があった。しかし今回、板門店で行われた五輪参加問題や芸術団・応援団などに関する協議はすんなりと進んでいた。
水面下でお膳立てがなされていたのだろう。前政権で遮断された南北の秘密交渉パイプ(チャンネル)が復活したといわれている。
韓国の政府関係者が昨年末に少なくとも2回以上、平壌を訪問し、韓米軍事演習中断と北の平昌五輪参加を話し合ったという。
遂には、金正恩委員長は実の妹・金与正労働党副部長を国際舞台にデビューさせた。金与正氏は2月11日に大統領秘書室長のイム・ジョンソク氏主催の晩餐会で、乾杯の辞を勧誘されると、こう呟いたという。
「率直に(正直に)言って、このように急に(韓国に)くるようになるとは思ってなかったが……」
金与正が、こう本心を吐露するほど、南北の接近は急展開を見せている。
北朝鮮がそれほど韓国と密に連係をとるのも、財政事情が悪化しているからに他ならない。また、仮に南北会談を進められれば、米国も軍事措置は取り難い。それを口実に核や、大陸間弾道ミサイル完成までの時間稼ぎをするつもりだろう。
【PROFILE】朴承ミン(パク・スンミン)/時事通信の元ソウル支局記者。長年、北朝鮮問題と韓国政治を取材。その間に平壌と開城工業団地、金剛山など北朝鮮の現地を5回ほど訪問取材。現在、韓国と日本のメディアに寄稿している。
※SAPIO2018年3・4月号