親が要介護になる頃、子世代は人生真っただ中。仕事でも脂がのってくる時期だ。2017年、歌舞伎俳優から劇団新派での新境地を開いた河合雪之丞さん(47才)もまた、同年の暮れに母・正子さんを看取り、現在は92才の父・宣質(のぶただ)さんを介護中。仕事と介護の両立に悩み、出した答えとは。
「子供時代の夢を叶え、独立独歩で役者に…などと、若い頃には自負していましたが、この歳になり、いかに多くの人に支えられて今の自分があるか、やっとわかってきました。人生、ひとりだけでできることなどないのです。介護も同じです。多くのかたに助けていただき、本当に感謝しています」
現在も、介護スタッフに支えられながら、自室と父の部屋を行き来する毎日だ。
「父は今、週3回デイサービスに通い、ときどき、ショートステイを利用しています。そこでリハビリやレクリエーションを“いやいや”やっているとは言いますが、一時、腰が悪く起き上がるのもつらいときもあったのが、歩行器も利用しながら歩けるまでに快復。案外、意欲的なのです。
そして食欲も旺盛。私が冷蔵庫のあり合わせでチャーハンやうどん、そばなどを作ると、何でも『うめえなぁ』と言って完食してくれます。すするのがつらくなっているようなので、麺類はあらかじめ短く切って調理し、具材も小さめに切っています」
介護食の調理法にも詳しいが特別勉強したわけではない。
「できるだけ一緒に食べたり、見ていたりしていますからね。何となく食べやすいか否かはわかります。『もっとゆっくり食べてください』と、母の代わりに注意もします(笑い)。最近、療養のためにやめていた酒を、またちょっと飲みたいと言い出した。若い頃は大酒豪でしたからね。それで私もつきあって、焼酎のお湯割りを1杯ほど楽しむことも。父が望む残りの人生に、できる限り寄り添っていきたいと思っています」
こうしたプロと介護を分担するのは非常に重要なことだという。主任介護支援専門員・看護師・社会福祉士の服部万里子さんはこう語る。
「介護は身体介護ばかりが注目されますが、実は技術+心ケアの両輪で進むことが重要です。食事や入浴介助などの技術面は介護職がプロですから効率よく、介護される人も快適。また体調や表情の変化から的確にリスクを読み取り、素早く対応できます。
でも、『今日はね…』と話したり、食卓を囲んだり、家族間の心の交流は家族にしかできません。介護職に依頼することは決して人任せではなく役割分担なのです。また認知症カフェなど地域支援も増え始め、介護する家族同士でアドバイスし合える機会も。親の介護が必要になったら、ひとりで抱えずプロや仲間と連携をすると気持ちが楽になります」
※女性セブン2018年3月15日号