厚生労働省が承認する「薬の用量」は幼児や小児は細かく分ける一方、15歳以上は「成人」と一括りにされがちだ。
だが一口に成人と言っても、高齢になるほど体力が衰えて食事量も落ちる。副作用を避けるためにも高齢者は一般的な成人男性より薬を飲む「量」を減らして当然だが、日本では薬の「使いすぎ」が蔓延する。
「日本の医療現場では年齢差を無視した薬の投与が行なわれます。本来は年齢に応じて薬の量を減らすべきで、生活習慣の改善にきちんと取り組んでいれば高血圧や糖尿病治療薬などでは、医薬品添付文書に記載されている最低限の量で十分に改善効果があります」(新潟大学名誉教授の岡田正彦医師)
糖尿病の利用者が多い高コレステロール薬が「使いすぎ」の典型とされる。
2015年12月、医療従事者向けに発表された「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」にはこんな注意喚起がある。〈高齢者では代謝低下による最大血中濃度の上昇や排泄低下による半減期の延長から薬物血中濃度が上昇しやすい〉〈実際の投与に際しては(中略)高齢者では少量(一般成人の3分の1~2分の1程度)から開始して、効果と有害事象をチェックしながら増量する心がけが重要である〉
「このガイドラインでは高齢者を75歳以上と定めていますが、実際には薬を飲み始める60歳以上から薬の用量に注意していくべきです」(たかせクリニック理事長・高瀬義昌医師)
※週刊ポスト2018年3月16日号