厚労省のワーキンググループは2月21日、高齢者に適正に医薬品を使うための初の指針案をまとめた。指針案では処方による典型的な有害事象や原因薬剤を例示し、国が「減薬」を進める方向性が打ち出された。有識者や一般の意見を聞いたうえで、今年4月以降に指針を正式に決める予定だ。
高齢者は加齢により肝臓や腎臓の機能が低下しており、薬の代謝や排泄に要する時間が長くなる。つまり、健康を維持するために多くの薬を服用するほど、体内に長くとどまった薬が効きすぎてしまい、深刻な副作用が現われるケースが多くなる。
日本の医療現場では年齢差を無視した薬の投与が行なわれているが、本来は年齢に応じて薬の量を減らすべきなのだ。糖尿病専門の「にしだわたる糖尿病内科」院長の西田亙医師は、糖尿病薬の減薬を実践する。
「糖尿病で広く処方されるSU薬は血糖値を下げる効果が大きい反面、薬が効きすぎて低血糖に陥り、最悪の場合は命に関わります。私がSU薬を処方する際は最も薬効が弱いアマリールを用い、添付文書上6mgまで処方できるところを最大でも1mg程度までしか処方しません。一種の“劇薬”であるSU薬を使って血糖値を適切にコントロールするには6分の1の量でも十分なのです」
実際に国が「減量」に動いたのが、認知症の進行を遅らせる抗認知症薬だ。