ほぼ満席の広い店内を2人の主婦パートが、料理を運んだり、注文を取ったりと駆け回っている。多忙な彼女たちだが、その表情は生き生きとしていた。50代の主婦パートが、その理由を明かす。
「これまでは1年契約で毎年、“今年で終わりじゃないか”とビクビクしていました。やはり年を取ると違う仕事を見つけるのは大変ですから…。ずっと働けるようになって本当に嬉しいですし、やる気も出ます」
2月13日、九州を中心に展開するファミリーレストランチェーン・ジョイフルは、グループで働くすべてのパート、アルバイト約1万7000人を4月1日から「無期雇用」に切り替えると発表した。同社管理本部広報室が今回の決定についてこう言う。
「パートやアルバイトなど有期契約で働いているかたがたは、常に“契約打ち切り”の心配があったと思います。弊社では4月から『無期転換ルール』が始まることもあり、全員無期雇用に切り替えることで、安心して働いていただける環境を作ろうと考えました。人材不足が叫ばれる昨今、ぜひ多くのかたに長く勤めていただきたい」
今春、“パート新時代”の幕が開こうとしている──。
総務省によれば、2017年のパートやアルバイトなど、非正規労働者は2036万人と労働者全体の37%を占める。10年前から約300万人も増えており、非正規労働者は年々、増加の一途を辿っている。労働問題に詳しい安西法律事務所・倉重公太朗弁護士が言う。
「非正規雇用の多くは契約期間が決まっています。また比較的雇われやすい半面、企業業績が悪化し、人員調整などが行われる際、削減対象になりやすかった。立場が不安定な上、正社員との所得格差も大きく、非正規労働者が増えることは大きな社会問題となっていた」
だが4月1日からこの状況に大きな変化が起こる。有期契約労働者が勤め先に申し込めば、無期雇用に転換できる新ルールがスタートするのだ。