厚生労働省による“あやしい統計”がいつの間にか“世の常識”として定着してしまうのは、裁量労働制の一件に限ったことではない。
2013年10月に、安倍首相は国会で「連合の集計結果では、ベースアップを行なう企業の割合が5年ぶりに2桁になった」と語った。この発言は労働組合5576組合のうち10%強の584組合が「賃金改善を獲得」という調査を根拠にしている。
しかし、「賃金改善」には一時金による賃上げなども含まれる。これらは業績によって増減するものであって、賃金の底上げ(ベア)とは似て非なるものだ。
ちなみに連合の調査では労働組合のない中小企業はもともと対象外。確かに安倍首相は「連合の調査では」と留保しているが、アベノミクスの果実が「サラリーマン社会全体」に還元されている根拠にはならないことを付け加えておく。
※週刊ポスト2018年3月16日号