後期旧石器時代から江戸時代にかけての池田遺跡が有名な、奈良県大和高田市。3月下旬から4月上旬にかけては、大中公園を中心に、高田川の両岸南北約2.5kmにわたり、見事な桜のトンネルが続く“高田千本桜”が人々に親しまれている。
また、隣接する広陵町も数々の古墳を有し、春になれば里合橋を桜が埋め尽くす。そんな、古代ロマンあふれるこれらの場所は、100年前から靴下の町として発展してきた場所だ。
ところで、全国で1年間に作られる靴下は、なんと約2億8550万足というが、そのうちの約4割が奈良産なのはご存じだろうか。
「奈良の靴下生産量は、ストッキングなどを含めると、国内シェア約35%(2017年時点)で全国1位なんです。ソックスに限れば、約63%を占めています。靴下の生産は、明治43年に大和高田市と広陵町で始まりました。
もともとこの場所は、奈良盆地にあり、降水量が年間1500mmしか降らず、水不足に悩まされていました。そのため米造りには向かず、江戸時代から綿が作られていて、それが靴下作りにつながっていきました」(奈良県靴下組合の砂山七郎さん・以下同)
奈良靴下の特長は、なんといっても履き心地のよさにある。綿だけでなく、地元産の素材“葛”の根を練り込んだ葛和紙繊維などが使われ、長時間履いても疲れないように設計されている。
「つま先からかかとまでの工程を、職人が一つ一つこだわって作っています。つま先を縫う時は、一足、一足裏返しにしてミシンをかけて、職人の手で仕上げているのです」
昨今、3足1000円のお手頃価格の靴下も多いが、靴下組合が開始したブランド『The Pair』の靴下は、1足1000~2000円とちょっと高め。だが素材がしっかりしており、履き心地もよく、かかとにフィットするデザインで、長持ちすると評判だ。
最近は、靴下ソムリエ資格認定試験を実施。靴下を製造する会社が約40社もある広陵町では、毎年、『靴下の市&地域特産品交流フェア』(今年は4月21~22日)を行っている。
ちなみに、今年の春はパステル調や、赤をアクセントにしたフェミニンなタイプの靴下がスカートにも合わせやすいと人気だ。
※女性セブン2018年3月22日号