フェイスブックや配車アプリのUber、日本で言えばフリマアプリのメルカリなど、新興企業が人々の生活を一変させ、急成長する時代になった。こうした成功する新興企業に共通しているのは、「人、モノ、カネ」といった従来型のリソースではなく、とにかく「人、人、人」が重視されているということだ。経営コンサルタントの大前研一氏は、「これからはエクセレント・カンパニーではなくエクセレント・パーソンの時代になる」と解説する。
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かつて、「エクセレント・カンパニー」というものが大いにもてはやされた時代があった。私のマッキンゼー時代の同僚であるトム・ピーターズとロバート・ウォータマンが1982年にアメリカで上梓した『エクセレント・カンパニー』(原題は『IN SEARCH OF EXCELLENCE』/邦訳は英治出版刊)が、日本を含む世界各国でベストセラーになったのだ。
同書では、IBMやマクドナルド、スリーエム、ウォルト・ディズニーなど、各方面で好業績を上げているアメリカの大企業を調査し、革新的な超優良企業=エクセレント・カンパニーと呼ぶべき会社の条件を分析・解説している。それらのエクセレント・カンパニーの多くは、今もなお世界的な大企業として君臨し続けている。その意味では、今から40年近く前になされたピーターズとウォータマンの企業分析は的を射ていたと言えるだろう。実際、旺盛な実験精神や顧客重視、社員の自主性の尊重など、今でも通用する普遍性のある定義も少なくない。
それでも、彼らがエクセレント・カンパニーの条件を探っていた1980年代は、まだテクノロジーの連続性や経験の蓄積、あるいは規模の経済といったものが通用した時代だった。その流れの中では、従来のビジネスの延長線上で商品やサービスを磨いていく「Do More Better」の仕事が求められた。とりわけ日本企業は、この「Do More Better」を得意とし、欧米企業に追いつき追い越せでやってきた。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とか「21世紀は日本の世紀」などともてはやされたのもこの時期だった。