経済成長する中国でも、この事件は多くの人々の琴線に触れたのだという。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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中国では今でも貧困に関するニュースに事欠かない。
多くの貧困地区での悲惨な話が伝えられる。人々は、爆買い旅行客が700万人も海外旅行に出かけているという現実の一方で、中国共産党自身がいまだ自国を「発展途上国」と位置付けていることを、あらためて感じるのである。
昨年末に『澎湃新聞』が伝えたニュースは、そのなかでも人々の心に深く突き刺さる事件であった。
事件が起きたのは12月24日。まさにクリスマスイブのことだった。
場所は雲南省昆明市のちいさな村、青山村である。この村で、両親の留守中に暖炉で薪を燃やして暖をとった4人の児童が、全員中毒死してしまったというのだ。
子供を一度に4人も失ってしまった陳才本さん夫妻は地元の農民である。自らが兄弟の少ないなかで育ったことで、たくさんの子供が欲しかった。子供は全部で5人。一番上の長男が少し離れていて20歳、その下に11歳、9歳、8歳、4歳と続いた。
4歳の子供以外はみな地元の青山小学校に通っていた。
この年齢構成からも分かるとおり、一人を育て終えてやっと少しの余裕ができたことで第2子、第3子と増やしたのだろう。4人の子はおそらく可愛い盛りだったはずだ。
事件が起きた当日、両親は喧嘩をしたという事で警察に逮捕されてしまった長男の引き取りのために家を空けた。その際、子供たちに換気をすることをきちんと伝えないまま出かけてしまったという。
中国の農村では、薪や石炭を焚いて暖房代わりにするのはごく当たり前の光景だ。大人がいれば何も問題ないが、子供だけで暖をとったことで事故が起きたのである。