毎年、会社で受けていた人間ドック。リタイアしてからも、「病気は早期発見が大切だ」と受診し続けている人も多いはずだ。
日本人間ドック学会が推奨する「平成30年度 1日ドック基本検査項目表」によれば、人間ドックの項目は12区分50種類に達する。しかし、医療経済ジャーナリストの室井一辰氏は、「人間ドックを過信してはならない」と指摘する。
「死に直結する重篤な病気の発見に特化しているわけではありません。例えば、基本検査項目には『脳の検査』が入っていないため、歳を重ねるほど増す脳梗塞や認知症のリスクに対応できていないのが現状です。
胸腹部に関しても『胸部X線』『上部消化管X線』『腹部超音波』の3検査のみで、十分とはいえない。『胃がん内視鏡検査』や『肺がんCT検査』など、高齢者ほどかかりやすいがんを初期の段階で判別できる検査が含まれていない。ほかにも『甲状腺検査』や『腫瘍マーカー検査』など、メジャーな検査がことごとく基本項目から漏れています」
もちろん、人間ドックがまったく無駄というわけではない。だが、あくまで「万人向けの基本セットメニュー」であって、各人の遺伝的リスクや生活習慣を考慮した「オーダーメード」ではない。
「例えば、がんの中でも大腸がんや乳がんには遺伝性のものが多いことが知られています。また、不規則な生活を送る人は、そうでない人に比べて高血圧や動脈硬化のリスクが高いことも知られている。自分の健康リスク要因や心配によって、必要に応じた検査を選択していくことが重要なのです」(同前)