国民生活センターによると、全国の消費生活センターに寄せられた歯科治療に関する相談件数は2007年度の2152件から2016年度には2952件に増加。相談の中には、治療時の歯科医の判断ミスで長年体調不良に悩まされた話や、医療器具の使い回しを指摘する声などがあった。
こうした歯科医のミスや怠慢が増加する背景には、業界をとりまく環境の変化がある。2010年以降、全国の歯科医の数は10万人を超え、歯科診療所数も増加の一途を辿っている。全国のコンビニ数は約5万7000店(2016年度)なのに対し、歯科診療所の数はこれを大きく上回る約6万9000軒にのぼる。
サイトウ歯科医院の斎藤正人院長が語る。
「医師も診療所数も飽和状態となり、度重なる診療報酬の改定や少子化、人口減少も相まって、歯科業界は苦境に立っています。開業数年で廃業に追い込まれる診療所も少なくなく、歯科医の待遇も低下する一方です。
ベテラン歯科医が減少する中、経験に乏しい歯科医が収入の減少を補うため、患者の囲い込みや利益第一主義に走った結果、トラブルや事故が頻発し、業界全体のレベルも低下していったのです」
また、かつて歯科診療所の1か月の保険点数は20万点(約200万円相当)程度まで認められていたが、現在は医療費削減のため15万点程度に抑えなければならない。
これを超えると、政府の指導が入るなど、歯科医を取り巻く環境はかつてないほど苦しいものとなっている。そのため、歯科医も“生きる”ため、なりふりかまわない“患者集め”を行う。それがトラブル増加につながっているのだろう。
※女性セブン2018年3月22日号