国内

震災被災者 地域と学校、教師と親と子供の連携最重要と痛感

防災訓練のための新型津波模型を作る宮古工業高校の生徒たち

 東日本大震災を経験した岩手県宮古市は、自主防災組織を強化した。モットーは「自分の街は自分たちで守る」。

 力を注いだのは、さまざまな災害を想定した多種多様な防災訓練。津波が防潮堤を越えたとき、津波と火事が同時に起きたとき、地震、豪雨、台風など、災害によって異なる避難路を設け、ときには抜き打ちで訓練を行った。

 さらに東日本大震災で役立ったのが「学校と子供の保護者との連携」。

「とにかく常日頃から頻繁に保護者のかたと連絡を取り合い、連携して防災に取り組んできました」

 そう語るのは、宮古市立津軽石小学校・元校長の鳥羽真喜子さん(63才)。津軽石小学校は、海のそばにもかかわらず、生徒約250人犠牲者、ケガ人ゼロの学校だ。

「3.11の震災で、避難した高台から戻ってきたとき、校庭に数名のお母さんたちが、お子さんを迎えにいらっしゃっていました。ですがそこできっぱりと、『また津波が来るかもしれないので、今はお戻しできません』とお断りしました。お母さんたちは海沿いの家に住まわれているので、家に戻るのは危険。現に家に戻って亡くなられたかたがたくさんいらっしゃいます。この状況で自分の子供を人の手に委ねることは、どんなにかおつらかったと思います。あのときご理解いただけたのは、普段から構築してきた教師と保護者との、よい関係性があったからだと思います」

 東日本大震災で亡くなった子供のほとんどが、家族らといる時や家に帰宅途中に津波に巻き込まれたケースだった。鳥羽さんはこうも言う。

「私が東日本大震災の経験でいちばん強く感じたのが、地域と学校、教師と親と子供の『連携』が何よりも大事だということ。防災について何度も話し合い、お互い信頼し合ってこそ子供の命が守れるのです」

 地震や津波、豪雨などの自然災害は、起こらないにこしたことはない。だが、「いつかは必ず起こる」という危機感は忘れてはならない。

 今日からでも家族や学校の先生、ご近所のかたがたと、防災について話し合う機会を頻繁に設けてはいかがだろうか。高い防潮堤を作る前に、まずは私たち一人一人の「心の防潮堤」を築くことが大切なのだ。

※女性セブン2018年3月22日号

関連記事

トピックス

広末涼子容疑者(時事通信フォト)と事故現場
《事故前にも奇行》広末涼子容疑者、同乗した“自称マネージャー”が運転しなかった謎…奈良からおよそ約450キロの道のり「撮影の帰り道だった可能性」
NEWSポストセブン
筑波大の入学式に臨まれる悠仁さま(時事通信フォト)
【筑波大入学の悠仁さま】通学ルートの高速道路下に「八潮市道路陥没」下水道管が通っていた 専門家の見解は
NEWSポストセブン
広末は再婚へと向かうのか
「これからもずっと応援していく」逮捕された広末涼子の叔父が明かす本当の素顔、近隣住人が目撃したシンママ子育て奮闘姿
坂本勇人(左)を阿部慎之助監督は今後どう起用していくのか
《年俸5億円の代打要員・守備固めはいらない…》巨人・坂本勇人「不調の原因」はどこにあるのか 阿部監督に迫られる「坂本を使わない」の決断
週刊ポスト
女優の広末涼子容疑者(44)が現行犯逮捕された
「『キャー!!』って尋常じゃない声が断続的に続いて…」事故直前、サービスエリアに響いた謎の奇声 “不思議な行動”が次々と発覚、薬物検査も実施へ 【広末涼子逮捕】
NEWSポストセブン
「居酒屋で女将をしている。来てください」と明かした尾野真千子
居酒屋勤務を告白の尾野真千子、「女優」と「女将」の“二足のわらじ” 実際に店を訪れた人が語る“働きぶり”、常連客とお酒を飲むことも
週刊ポスト
再再婚が噂される鳥羽氏(右)
《芸能活動自粛の広末涼子》鳥羽周作シェフが水面下で進めていた「新たな生活」 1月に運営会社の代表取締役に復帰も…事故に無言つらぬく現在
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
《病院の中をウロウロ…挙動不審》広末涼子容疑者、逮捕前に「薬コンプリート!」「あーー逃げたい」など体調不良を吐露していた苦悩…看護師の左足を蹴る
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン