芸能

脇役の美学は「ちょっと」に宿る 大杉漣ら名脇役たちの拘り

大杉漣ら名脇役たちの「脇役の美学」とは

 今の芸能界においては、才能のある役者であれば誰もが主役に躍り出る可能性がある。だがその中であえて、“脇役に徹する”という美学もまた存在する。大杉漣さん(享年66)の訃報は改めてバイプレイヤーの存在感の大きさを示した。

 2008年8月に亡くなった女優、深浦加奈子さん(享年48)は、数多の人気ドラマに脇役として出演し、名バイプレイヤーといわれ続けた。しかし、父・栄助さんは「本人は脇役だという意識はなかったと思う」と語る。

「結果として、加奈子が演じていた役柄は脇役です。ですが、それは女優として仕事をしていくなかで、試行錯誤しながらもたどり着いた、自分にしかできないベストポジションだったのだと思います」

 親として、娘に主役としてスポットライトを浴びてほしいという気持ちも皆無だったと言う。

「そんなこと、考えたこともない。加奈子がテレビに出始めたのは29才と遅かったし、主役は若くてはつらつとした人がやるものだと思っていた。そんなことよりも、『このドラマは脇役がしっかりしているから面白いんだ』と見たかたに思われるのが、親としても何よりうれしいことでした」

 主演よりも脇役として作品を彩りたい。そう考える役者は深浦さんだけではない。片桐はいり(55才)は過去のインタビューでこう話している。

《主演をするとか、自分の名前で何かするとか、そういったことには興味がない。男だろうとモノだろうと宇宙人だろうとヘンな役、喜んでやりますよ、何でもやりますよっていう気持ちでいるんです》

 また、樹木希林(75才)は脇役で出演することを“ちょい演”と表現し、「ワンシーンだけ出演するからこそ、椅子の傾け方とか、1つ1つの動作が大きな意味を持つ」とその魅力を語っている。

 60年以上、京都の東映撮影所で“斬られ役”と呼ばれる時代劇の脇役を演じてきた福本清三(75才)も、脇役の美学は“ちょっと”に宿ると言う。

「脇役は“ちょっと目立つ、わずかに目立つ、やや目立つ”が鉄則。主役の邪魔にならないように、少しだけ自分の個性を出す。そのさじ加減が腕の見せ所なんです」

 そんな福本が今なお憧れているのは喜劇王・チャップリンだという。

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