食品関連事業者から出る年間のフードロス339万tのうち、レストランや居酒屋など外食産業から出るのはおよそ120万t。うち7割弱が注文した料理の『食べ残し』である。
「フードロスを防ぐには、この食べ残しをいかに減らすかがポイントです」
そう語るのは、愛知工業大学経営学部教授で「ドギーバッグ普及委員会」の理事長を務める小林富雄氏。
ドギーバッグとは、レストランなどで残した食べ物を持ち帰るための容器や袋のこと。アメリカ発祥で、食後に「残りは持ち帰ってペットの犬に食べさせます」と店員に告げたことから名づけられた。
「日本は、欧米に比べて持ち帰り文化が普及していない。理由は飲食店側の過度な衛生管理にあります。戦後の日本では、不衛生な食品の流通を防ぐため、保健所が飲食店を厳しく指導し、食品衛生法で食中毒を起こした飲食店の名前を公表することを定めました。このため、飲食店側は、客が持ち帰りを望んでも断る方向になったのです。持ち帰った先で食中毒でも起こされたら、お店は責任を取れませんからね。
しかし、食品衛生法では、持ち帰りを禁止する決まりはありません。しっかり火を通したものであれば、よほどのことがない限り安全なのですが、今も戦後の名残を引きずっているわけです」(小林氏)
時代を経て、客側に“持ち帰るのは恥ずかしい”との意識が芽生えたことも、フードロスを生む要因となった。
ドギーバッグ普及委員会は、こうした「恥ずかしさ」を払拭するため、おしゃれで携帯しやすいプラスチック製のドギーバッグと、「自己責任カード」を会員に配布している。
「“お店には迷惑をかけません”と消費者が自らアピールすることで、残った食べ物をスムーズに持ち帰ることが狙いです。自己責任を浸透させ、持ち帰り文化が日本に定着すれば、手つかず状態だった『食べ残しによるフードロス』を減らせるはずです」(小林氏)
◆スーパーで棚の奥から取る習性も影響
また、忘れてはならないのが、各家庭におけるフードロスの問題だ。家庭から出るフードロスは年間282万t。全体の45%を占めている。家庭でのフードロスについて、『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書)の著者で、この問題に詳しい井出留美さんは「買い方」と「食べ方」が大きな要因だと指摘する。