脳梗塞は発症から4時間30分以内であればt-PA(血栓溶解療法)が、8時間以内なら血管内治療も可能なこともある。しかし、救急搬送された約9割の脳梗塞患者は時間の経過や脳細胞ダメージの範囲などで、これらの治療の対象にならない。また、命が助かっても手足の麻痺や言語の障害などの後遺症で社会復帰が困難なこともあり、発症予防が大切となっている。
日本医科大学多摩永山病院脳神経内科の長尾毅彦部長に詳しい話を聞いた。
「40歳以上の働き盛りでの脳梗塞は、ほとんどメタボリックシンドロームが原因です。肥満を伴う高血圧や糖尿病、動脈硬化がベースにあり、過労やストレス、喫煙などが重なり、脳梗塞の原因となります。脳の血流が一時的に悪化し、片側の手足が動かない、呂律が回らないなどの症状が起こるものの24時間以内に消える一過性脳虚血発作(TIA)を起こすこともあります。これを放置せず、すぐに専門医を受診し、検査と治療を行なうことが肝心です」
近年の臨床研究により、脳梗塞の予行演習ともいえるTIAを起こした人の10~15%が3か月以内に脳梗塞となり、その半数が2日以内に発症していることがわかってきた。TIAと診断されたら、すぐに抗血小板薬などの血液さらさら治療だけでなく、高血圧や糖尿病に対する内科的治療、減量やメタボリック症候群対策も併せて発症予防を行なう。
高齢者に多い心房細動による心原性脳塞栓症予防に対しては不整脈を見つけることが大きなポイントになる。発作性の不整脈は通常の数分間の心電図では発見されにくいこともあり、24時間のホルター心電図や年単位で心電図をモニタリングできる小型の埋め込み型心臓モニターが保険承認されている。高齢になるほど不整脈の自覚が乏しく、24時間不整脈が起こっているのに気づかないのも珍しくない。