土俵の上ではなく、街でお相撲さんを見かけると、必ず着物姿だ。番付によって着られる衣装が変わるのも角界のしきたり。十両になれば紋付きの羽織袴を着ることができる。さらに幕内になると「染め抜き」と呼ばれる着流しを着ることが許される。こちらは四股名入りの特注品だ。
ただ、同じ関取でも染め抜きを許されていない十両は、真夏でも羽織袴で場所入りしなければならない。序ノ口、序二段は「仕着せ」と呼ばれる部屋の名前が入ったお揃いの浴衣を着る。
「三段目に昇進すれば羽織を着ることもできるが、博多帯と番傘、襟巻(マフラー)、外套(コート)を着用できるのは幕下以上と決まっている」(若手親方)
角界には「顔じゃない」という隠語がある。分不相応である、という意味だ。番付優先の実力世界では、分相応の振る舞いが常に求められる。その一端が力士の衣裳に現われている。
※週刊ポスト2018年3月23・30日号