「最期の病床の横にも『9係』の台本を置いてせりふを覚えていて、亡くなる前日まで打ち合わせしていました。激痛を伴う肺気腫を発症していても、現場に戻るつもりでした。それぐらい『9係』という作品を愛していたんです」(芸能関係者)
名優・渡瀬恒彦さん(享年72)が、3月14日、一周忌を迎えた。
最期の公の場となったのは、主演を務めるドラマ『警視庁捜査一課9係』(テレビ朝日系)の新シリーズの発表会見(昨年2月)だった。その直後に亡くなったので、4月からのオンエアーは、異例の「主演不在」で放送された。
「渡瀬さんの体調を考慮して、ほとんど登場しない脚本で撮影が始まっていました。代わりに、部下の刑事役だった井ノ原快彦さん(41才)の出番を増やすことでカバーしました。渡瀬さんは病室のベッドで“井ノ原、大変だろうな”とずっと気にかけていました」(前出・芸能関係者)
あれから1年。『9係』がこの4月にリニューアルして帰ってくる。渡瀬さんが演じた係長が異動になったので、9係は解散。しかし、警視総監の指示で新設された特別捜査班に元9係のメンバーが再結集するという設定だ。
主演を引き継ぐのは元部下の井ノ原。タイトルも『特捜9』と刷新された。
「井ノ原さんが渡瀬さんに初めて会ったのは28才のとき。井ノ原さんは渡瀬さんのことを“父親のような存在”とよく言っていました。演技のことも、プライベートなことも、よく相談していたそうです。
渡瀬さんって、撮影現場ではものすごく怖いんです。“ちゃんとやれ!”ってよく怒鳴る。井ノ原さんもよく怒られたそうです。でも、その後に、“イノッチに怒鳴る人ってあんまりいないでしょ”って優しく話しかけるんです。そうやって、現場の士気を上げ、若手の成長も促していた。
渡瀬さんは“このドラマはイノッチの成長次第。あとは任せる”と公言していたので、井ノ原さんに跡を継いでもらって本望だと思います」(ドラマ関係者)
一周忌を迎えても渡瀬さんを送る「お別れ会」は開かれていない。あれだけ多くの芸能関係者に慕われた俳優にしては、珍しいことだ。
「派手なことが嫌いな無骨な人でしたから、葬儀も本人の希望もあって近親者やごく近しい人だけの家族葬で営まれました。
最期の病室を見舞っていた兄の渡哲也さん(76才)も、渡瀬さんと同じ肺気腫と闘っていました。兄弟の母・雅子さんも肺炎で亡くなっているので、もともと呼吸器系に疾患を抱えやすい家系なのかもしれません。
兄弟で励まし合っていたのですが、その中で“どっちが先に逝ってもお互いに派手なお別れの会みたいなのはやめておこうな”と約束していたそうです」(前出・芸能関係者)
棺には渡瀬さんと家族の写真が納められたという。
「病気になってから行った箱根旅行で撮った家族写真でした。それまでは俳優一筋で、そんな時間もありませんでしたから」(前出・芸能関係者)
『9係』の後継ドラマ『特捜9』をいちばん楽しみにしているのは、渡瀬さんなのかもしれない。
※女性セブン2018年3月29日・4月5日号