作家の佐藤優氏と思想史研究家の片山杜秀氏が「平成史」を語り合うシリーズ。今回は、安倍晋三首相がなぜ長期政権を運営できるのかについて語り合った。
片山:2012年に起こった民主党から自民党への政権交代で、私は社会にニヒリズムの空気が漂ったように感じました。民主党の失政で国民の期待が幻滅に変わった。 そして2度目の安倍政権が誕生するわけですが、何をやっても変わらないし、意味がないというニヒリズムが長期政権を支えている。
佐藤:安倍首相がなぜ長期政権を運営できるのか。その理由は簡単です。野党の弱体化と辞任の原因になった潰瘍性大腸炎の新薬が開発されたこと。
片山:内実は最初の政権のときから何も変わっていない、と。
佐藤:そう。政治手法が変わったとか、過去を反省したとか擁護する人はいますが関係ないと思います。
片山:私には安倍首相が主義や思想を持っているようには思えません。彼の言葉を突き詰めてみると辻褄も合わないし、支持者にいい顔をしているだけなのがよく分かる。だって日本会議の支援を受けて、公明党と連立を組むなんて、どう考えても筋が通らない。
佐藤:ただ思想も一貫性もないから突発的な出来事には強い。たとえば2013年1月に起きて日本人10人を含む約40人が犠牲になったアルジェリアのテロ(注1)で、安倍政権は非常に機動的だった。事件当時、警備公安的な視点も持つ政務官の城内実がたまたまクロアチアにいて、すぐにアルジェリアに駆けつけたことも大きいですが。
【注1/2013年1月16日、アルジェリア南部の天然ガス採掘施設で発生したイスラム過激派による人質事件。犠牲者は日本人10人を含む約40人】