物語の舞台を薩摩から江戸に移したNHK大河『西郷どん』。幕末のスペクタクルや登場人物たちの恋愛模様とともにシビアなお金の話が描き出されている。
鈴木亮平演じる西郷吉之助(のちの隆盛)が、藩主・島津斉彬(渡辺謙)の江戸への随行役に抜擢されて大喜び──が、妻の須賀(橋本愛)から「支度金30両」が必要と聞かされて愕然とし、資金集めに奔走する。
第8話(2月25日放送)で西郷が下級武士の“現実”を突きつけられるシーンだが、「30両」とは当時、どのくらいの価値だったのか。
薩摩藩で年貢などを計算する郡方書役助だった吉之助の役料、いわゆる年収は「41石」とされる。歴史作家の井手窪剛氏が解説する。
「当時の1石はおよそ1両でしたから、斉彬に忠誠を誓う西郷は“年収41両”あまりで、その4分の3にあたる30両を支度金として用意したことになります」
江戸時代は金貨(小判1枚が1両)、銀貨、銅貨の三貨制度が敷かれていた。井手窪氏が続ける。
「“レート”が常に変動する上に武家は金貨を、商人は銀貨を使っていた。幕末の混乱で貨幣の価値は年々下がっていたので、大まかにしか現代の価値に換算することができませんが、米の値段を基準にして、江戸後期の1両がおよそ12万円ぐらいになります。そうなると、西郷の“年収”は約492万円と計算できます」
銅貨1文は20円、銀1匁が2000円程度だという。
※週刊ポスト2018年3月23・30日号