中国の景気の減速は、こんなところからも伺われるようだ。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
* * *
旧正月(春節)が終り元宵節も過ぎると、中国の人々の頭の中からやっと完全に正月気分が消え去る。今年の春節の話題のなかで、大きく注目されたのは中国のお年玉である「紅包」の中身が薄くなったという事だった。とくに春節を終えて両親の故郷から都会へと帰ってきた子供たちの間で、その話題が高まったという。
その理由は、かつてのようなバブルの発想が人々のなかから消えてしまっていること。また将来に対する以前のような希望が無くなってしまったということらしい。いずれにせよ、日本のバブル後のようなちょっとした委縮が始まったという事なのだろう。
そんな世相を反映したものなのか同かはわからないが、最近、人々の耳目を集めたニュースがある。それが『中国新聞ネット』(2018年3月1日)の報じたある泥棒に関するニュースである。
記事のタイトルは、〈男は一晩で6台の高級車を荒らしたが、戦利品はわずかにタバコ3カートンと傘2本 懲役は3年半〉である。
狙った車は、ランボルギーニ、ベンツ、キャデラックなどだったという。いずれも窓ガラスを壊して社内に侵入したが、収穫はタイトルにあるわずかな物品であった。
これで3年半の懲役ではそろばんが合わないのだが、それよりも大変なのは、彼が壊した車の窓ガラスなどの被害総額で、それが概算でなんと15万1417元(約253万円)にもなるという。これも昨今の社会の事情を反映しているのだろうか。