1度の検査で全身をくまなく調べることができるため“がん検診の切り札”と呼ばれる「陽電子放射断層撮影装置」(PET)。それまで主流だったX線検査では見つけられるがんの大きさの限界が直径1.5cmだったが、PETは直径1cmのがんを発見できる。この0.5cmの差により、従来の検査に比べて検出できるがんが格段に増えた。
そのPETが、近年さらなる進化を遂げた。磁気共鳴画像装置(MRI)と組み合わせた「MR-PET」だ。2010年にドイツ・シーメンス社から発売されて以降、国内でもその台数を増やしており、現在10台が稼働している。
2016年9月にMR-PETを導入した、相良病院(鹿児島県)の相良吉昭理事長が話す。
「PETは『最もがんの存在を検知しやすい』、MRIは『最も部位を特定しやすい』という、それぞれ補い合う性質を持っている。同時に検査を行なうことで、単体よりも精度を高めることができます。
対象のがんは乳腺、頭頚部、甲状腺、肺、食道、大腸、前立腺、膵臓など幅広く、全身をくまなく検査できる。そのため初期の小さながんや、再発や転移も見つけやすい」
検査費用は12万9600円でX線検査(約3万円、3割負担なら9000円)に比べて高額だが、「X線検査に比べて精度は約4倍、体への負担は半分以下」(医療経済ジャーナリストの室井一辰氏)とされる。