なにかと話題の大相撲。相撲の起源は実に『古事記』の時代にまで遡る。室町時代の武士装束をモチーフにした鮮やかな直垂と烏帽子を身にまとい、土俵上で取組を裁くのが行司だ。一見華やかだが、際どい勝負でも引き分けの判定がなく、必ずどちらかの力士に軍配を上げないといけない。それでいて土俵下の審判委員から「物言い」をつけられ、最終的な決定権はないという辛い立場だ。
行司は力士同様に階級が8段階あり、横綱にあたる最高位が立行司。以下、三役、幕内、十枚目、幕下、三段目、序二段、序ノ口と分かれている。階級によって軍配につける房の色や衣装、履物まで細かく規定されており、三役格以上は足袋に草履を履き、立行司のみ短刀を差している。短刀は横綱、大関の重要な相撲を裁くため、差し違えたときは切腹する覚悟があるという、昔からのしきたりだ。
「さすがに切腹はしないが、差し違いの際は理事長に進退伺を出す」(若手行司)
定員は45人で、力士と同じく部屋に所属する。審判員と競技者が寝起きを共にするスポーツは相撲ぐらいだろう。
行司の名前は全員が「式守」か「木村」。もちろん本名ではなく、「一門や部屋によって木村か式守が決まっている」(協会関係者)ため、事実上入門した時点でどちらを名乗るかが決まる。入門時は本名を下の名前に使うが、出世すると先輩の行司名や由緒ある行司名を継承しながら三役格まで進み、最終的に立行司へと昇進。式守伊之助、さらに最高位の木村庄之助の名を継ぐ。
※週刊ポスト2018年3月23・30日号