ネットの普及で動画市場が爆発的に伸長しているのは中国も同じだ。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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ネット上の言論にまで厳しく目を光らせていると報じられる中国だが、その一方で、ネットの中には当局の監視の目が行き届かない世界も広がり始めている。
そのキーワードは中国の「直播」(ライブ)と呼ばれるものだ。これは「中国版ユーチューバー」とも呼ばれているが、要するに個人でネット上に動画を投稿したり、ライブで視聴者(会員)に情報を届けたりする類いの活動のことだ。
大半は、料理のレシピや作り方、上手なメイクの仕方などといったものだが、昨年にこのライブを通じて大金を得たという報道が流れると、参入者が激増し、それにともなって内容も過激化していった。いまでは多くの伝統メディアが問題を特集するなど大きな社会問題になっている。
そうしたなか、四川省を中心にライブに対し大規模な取り締まりが行われて話題となった。
報じているのは四川省の封面新聞(2月28日付)である。タイトルは、〈多数のネットライブ局がワイセツな内容を報じたとして調査対象に 100近い女性のライブ発信者がわずか40日間で1000万元(約1億6700万円)を超える収入を手に〉である。
取り締まりの対象となったのは浙江省、江蘇省、広東省、湖北省、福建省、上海市などに広がるライブで、「泛(汎)果」、「星雲直播」など。これらは10月20日から11月30日までの40日間でタイトルのような荒稼ぎをしていたというのだから、新規参入が止まらないのもうなずける。
ちなみに「泛果」の会員数は、約68万人というから、個人が相手にするレベルではない。北京のテレビ関係者が語る。
「会員数の多さを見ても、ここにニーズがあることは確か。発信者にも大きな収入が約束されているとなれば、これが放っておかれるはずはありません。今回、大規模な取り締まりがあったといっても、いたちごっこになるのは目に見えています。力で抑え込むことも難しいでしょうね」
なし崩しにアングラな世界が広がっていくことも、心配されているというのだ。