韓国で行なわれていた平昌冬季五輪も閉幕し、いよいよ2年後は東京五輪。選手たちの熱戦はもちろん、日本経済にとって「五輪特需」の期待も高まるが、気掛かりなのは“祭りの後”だ。すでに江東区や中央区の湾岸エリアでは競技会場や選手村の建設に加え、高層マンションも次々と建ち並び価格も高騰しているが、果たして五輪後も好況は続くのか。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が予測する。
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少し気の早い話だが、東京五輪が終わってからの湾岸エリアにおけるマンション市場はどうなるのかについて考えてみたい。
まず周知の通り、東京五輪における各競技の開催会場は東京の江東区湾岸エリアに集中している。競技施設の一部はその後もレガシーとして利用されるが、多くは閉幕後に撤去される。中央区の晴海エリアに設置される選手村は、その後住宅として分譲されたり賃貸に出されたりすることが決まっている。
現在、江東区の湾岸エリアにはタワーマンションが林立している。現在建設中、あるいは今後建設予定のものもある。十数年前から、江東区の湾岸エリアはタワーマンションの建設ラッシュが続いていると言っていい。
そして、東京五輪の開催が決定した2013年の秋以降、湾岸エリアのタワーマンションは価格が上昇したにもかかわらず、販売はかなり好調だった。五輪開催決定前と後では、市場の様相が一変したと言っていい。
例えば、当時江東区の湾岸エリアで販売活動が佳境に入っていたのは「ブリリア有明シティタワー」と「スカイズ タワー&ガーデン」というタワーマンションがある。ブリリア33階建ての全600戸だが、スカイズは44階建てで全1110戸の大規模物件。竣工は翌年の8月に予定されていた。
五輪開催地の決定前は人影まばらだったこの両物件の販売センターへは、決定翌日から見学客が殺到したという。そして次々に購入契約が結ばれ、両物件とも数か月後には完売してしまった。
また、同時期に選手村の建設が予定されていた中央区の晴海エリアでは、「ザ・パークハウス晴海タワーズクロノレジデンス」という49階建て883戸の物件が販売されていた。建物は開催決定直後の2013年11月だった。完成在庫になっても販売が長引くと予想されていたが、五輪開催決定で販売センターはにわかに活気づいた。その結果、2014年の早い段階で完売にこぎつけている。
これら五輪の勢いで新築時の販売がスムーズに進んだ物件は今、どうなっているのか?
例えば、前述のスカイズ タワー&ガーデン。この物件は地下鉄の有楽町線「豊洲」駅から12分も歩く立地。そこをプールなどの豪華施設で補った、典型的な湾岸タワーマンション。建物が完成後も中古物件として多くの住戸が売り出された。すでに築3年と少し。市場では「値上がり物件」としての位置づけにある。
ただし、高値で売り抜けることができた新築購入者は、さほど多くないと推定できる。その様子は、レインズ(国交省管轄の指定流通機構)のデータを見ていると分かる。
この原稿を書いている時点(2018年3月中旬)でレインズをみると、売り出し物件の登録が32件。成約を調べてみると直近の1年で18件。1か月に1.5件という割合だ。となると、今出ている32件がすべて売れるまでには2年近くかかる。その時には、また新たな売出し物件が出ていることだろう。
売り出し中の32物件の平均坪単価は約364万円。直近の1年に成約した住戸の平均坪単価は約309万円。これを見ると、「高く売り抜けたいけれど、なかなかできない」という実態が見えてくる。