後々のダメージが深刻になることもある高齢者の転倒。転んだ親本人が対処できないことも多いだろう。家族としては慌てずに、適切な対処をしたいところ。そのために速やかにすべきこと、やってはいけないことを頭に入れておきたい。
「速やかにチェックすべきは骨折や脳の損傷がないかどうかです」と、セコム医療システム取締役 ケアサービス部の武石嘉子さんは言う。
「これらがある場合、動かすことで状態が悪化することがあるので、できるだけ転倒したときの姿勢のまま、【1】意識の有無【2】骨折による腫れ、変形、機能障害があるか【3】嘔吐、出血があるか【4】痛み、吐き気、不快感があるかをチェックしてください。1つでも当てはまれば、緊急の処置を要する可能性があります。落ち着いて救急車を呼びましょう」
一見して大きなダメージが見られなくても、簡単に対処不要と判断するのは不安だ。
「頭を打ったときによく発症する硬膜下血腫は、脳からの出血が頭蓋骨のすぐ内側の硬膜下にたまり、脳を圧迫するもの。出血が急激に起こる急性硬膜下血腫は、すぐに意識障害などが起こりますが、ジワジワと血腫ができる慢性硬膜下血腫の場合は、打撲した直後は無症状。打撲から数週間~数か月後に頭痛や嘔吐、認知症のような症状が出ます。
転倒後に異状がなくても、頭を打っている場合はできるだけ早く検査のできる病院を受診しましょう。さらに判断に迷うときは、かかりつけ医や訪問医、訪問看護師に相談を。善後策を提案してくれるほか、病院への橋渡しもしてくれます」
また離れて暮らしている場合は、親がひとりで転倒するような状況も心配だ。
「高齢者は転んだ状態のまま動けなくなることがあります。独居の室内で転んで身動きが取れず、脱水、衰弱状態で数日後にやっと発見されるケースも少なくありません。室内の数か所に電話の子機など連絡手段の配置や、足元照明を設置するなどの工夫を。特に夜間のトイレは転倒リスクが高いので、夜間だけおむつなどを使うのも1つの方法です。また緊急時、近所の人に入室して助けてもらえるよう、事前に入室方法などを相談しておくのも安心です」
※女性セブン2018年3月29日・4月5日号