台風やゲリラ豪雨などで恐ろしいのが土砂崩れ。これが発生すると、家屋の消失のみならず人命の危機にも晒される事態に陥るが、自宅の裏山で土砂崩れが発生し、山の所有者が複数いる場合、誰に賠償を求めれば良いのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
台風により、裏山が土砂崩れを起こし、現在も自宅の庭に土砂が流れ込んでいます。迅速に撤去作業を進めたいのですが、山の所有者が8人もいて、5人しか連絡が取れていません。自治体も全員の了承がなければ動きようがないとのこと。この場合、誰に賠償を求めながら、撤去作業を進めればよいですか。
【回答】
自然の山が崩れた場合、原則として崩れたことによる損害の賠償を求めることはできません。ただし、山の持ち主がもともと所有していた土砂が他人の土地を占拠すれば、その他人は所有権に基づく妨害排除請求として、土砂の所有者に対し、土砂の搬出を要求できます。搬出しなければ不法行為であり、合理的方法で除去し、費用を損害として賠償請求できます。
山の所有者が8人とのことですが、8人共有の山が崩れたのか、8人がその崩れた山の一部分ずつを所有しているのかで違ってきます。前者の場合、共有者は共有物に関する対外的責任を不可分的に負うので、各自が土砂を排除する責任があります。そこで所在が判明している5人の誰かに請求すればよいでしょう。
後者の場合は、あなたの家に入り込んだ土砂が誰の土地から発生したかが問題になります。土質などから明らかに含まれていない土地の所有者は責任がありません。そうではなく、8人の土地の土砂が混ざり合って分別できないとき、あるいは8人のうち、誰かの土地の土砂であることは間違いないが、8人のうちの誰の土地から流出したかわからない場合は民法の共同不法行為の規定に基づき、各自が責任を負うため、誰に対しても請求できます。
結局、判明している5人に請求すればよいということです。