後々のダメージが深刻になることもある高齢者の転倒。骨折や脳損傷による寝たきりや要介護、転倒の恐怖感による閉じこもりや廃用症候群などのリスクがある。
杖や靴など、転倒リスクを回避するために工夫されたグッズはどうだろう。セコム医療システム 取締役 ケアサービス部長・武石嘉子さんに聞いた。
「杖を使うことで2本の脚で支えている体を3本で支えます。安定して楽に歩けるので、転倒予防にはおすすめです。また靴はしっかり足にフィットして、基本的にはヒールも低い方が安定します。着脱が楽で転倒予防を工夫した商品も続々登場しています」
しかしグッズは一長一短。“歩く”動作は生活の一部であり、その人独自のクセがあることも忘れてはいけない、と武石さんは言う。
「たとえば杖は持った姿が“年寄りくさい”と敬遠する人が多いのも現実です。でも使うとなれば体重をかけて体を任せるもの。身長に合わせた杖の長さや使い方は、福祉用具専門店にいる専門相談員に、本人がしっかりレクチャーを受けた方がよいのです。
靴も履きなれた靴の重心位置に慣れているので、高機能の靴でも慣れない重心位置が大きなストレスになったりします。また一般的に転倒予防によいといわれる滑り止めつきの靴下も、すり足気味の人にはかえって危険です。
転倒はできるだけ避けたいものですが、それが目的になって行動範囲を狭めたり、安易に導入したグッズがストレスになっては残念。
家族は、親御さんの状態をよく見て不安な気持ちに寄り添うことがいちばんの役割。機能を補うグッズにもアンテナを張ってリサーチし、できるだけ長く元気に歩ける生活を支えてあげてください」
※女性セブン2018年3月29日・4月5日号