この日の永田町は、緊張に包まれていた。3月27日に行われた佐川宣寿・前国税庁長官の証人喚問である。といっても、当の佐川氏は“想定問答”を作って弁護士と入念に打ち合わせし、最初から「刑事訴追される恐れがあるので証言を控えたい」という“決め台詞”で通すことを決めていただろうから、緊張はさほどではなかったかもしれない。何しろ東京大学から大蔵省という超エリート街道を歩んだ佐川氏にとって、自らにとって不利な受け答えをせず無難な答弁をするのは朝飯前だ。
むしろ、質問する与野党の議員側や、財務省の官僚たちのほうが、どんな“爆弾”が飛び出すか分からないから、緊張したのではなかったか。
佐川氏が衛視に先導されて参議院の第1委員会室に入ったのは9時27分だったが、そのかなり前からほぼ一番乗りで席に陣取っていたのは、今井絵理子・参議院議員だ。予算委員会のメンバーではないが、後方の議員用の“傍聴席”に座った。足を組んで緊張した面持ちの今井氏は、昨年の不倫疑惑のイメージを払拭するかのような真剣な表情で証人喚問に聞き入っていた。
もう1人、緊張した表情で委員会室に入ってきたのは丸川珠代・参議院議員である。この日は、委員長の総括尋問のあと、与野党の予算委員の先陣を切って尋問に立った。結局引き出した情報は、「安倍総理や麻生財務大臣からの書き換えの指示はなかった」という言葉くらいで爆弾証言はなかったから、丸川氏本人も官邸も“安心”の結果となった。
森友疑惑の真相解明は大阪地検の手に委ねられることになりそうだ。
◆撮影:小倉雄一郎