森友問題によってにわかにスポットが当たることとなった財務省。霞が関のトップに君臨する“最強官庁”と呼ばれ、他の省庁の官僚たちは、財務官僚には頭が上がらないという。
そもそも官僚とは、中央省庁に勤める国家公務員のこと。国民による選挙で選ばれた政治家とは異なる立場にある。また、官僚の中でも、国家公務員総合職試験を突破した「キャリア」と呼ばれる幹部候補生と、その他の「ノンキャリア」と呼ばれるグループの大きく2つに分けられる。
キャリアは毎年20人程度しか採用されず、財務省に入省できるのはほんの一握り。その秀才の集まりが出世を争い、最後に残った1人が、最高位である事務次官のイスに座ることができる。
一方のノンキャリアは、ある一定のポストで頭打ちだ。元財務省キャリア官僚でニューヨーク州弁護士の山口真由さんが語る。
「基本的には、大臣官房や主計局など“大臣の部屋”に近いところほど偉く、主計官をはじめ、大臣官房の課長や秘書課長、文書課長が“次官コース”とされています。近畿財務局長も、次官コースを歩む者をはじめ、同期の中でもエース級の官僚しか行けないポストです」
今回の公文書改ざん問題で辞任した、前国税庁長官の佐川宣寿氏もキャリア官僚。東大卒業後、旧大蔵省に入省。故・塩川正十郎財務相の秘書官を務めるなど出世コースを歩んだ。一方、3月7日に自殺した近畿財務局の職員はノンキャリアだった。政治評論家の有馬晴海氏が語る。
「キャリア組は、地方で数年経験を積むとすぐに本省へ栄転するのに対し、ノンキャリアはずっと同じ部署で、中央の意向を汲み続けなければなりません。
今回の改ざんも、近畿財務局の職員が中央から『これはまずいからこう書き換えろ』と何度も言われ、徹夜でやったと聞いています。プレッシャーや過酷な労働が続き、自殺を選択してしまったのではないでしょうか。
官僚は失敗するとそこで出世が途絶えるため、絶対に失敗できない生き物。今回の自殺は地方で起きたことですが、実は本庁では毎年自殺者が出ているといわれています。それほど村社会なので、ノイローゼになる人が多いんです」
これまで、最強官庁として圧倒的な権力を誇っていた財務省が、なぜ政権に“忖度”するようになったのか。
「2014年に設立された内閣人事局が、官僚組織の在り方をいびつにしました。それまで、官僚人事は省内で行っていたのが、600人の審議官以上の人事権を内閣が持つことになった。そのため、官僚が官邸の顔色をうかがって今回のようなことが起きたのだと思います」(有馬氏)
「昔は皆“国家のため”という意識を持って働いていた。今は皆が政治家の顔色をうかがうヒラメになってしまった」
元大蔵官僚が現状を嘆く。先人のつぶやきは現役官僚に届くのだろうか。
※女性セブン2018年4月12日号