国内

解消されない保育士不足 待遇改善政策も行き渡らず

日本が子供にかける予算は諸国の中で最低ランク(写真/アフロ)

 日本では“保育士不足”が社会問題となって久しい。認可保育園の園児の定員や保育士数は自治体と運営事業者が保育園の土地や面積を考慮し決めるが、慢性的な人手不足から、基準をギリギリ満たす保育士を配置しているため、1人でも欠員が生じると現場が回らなくなるところもある。認可外保育園は、さらに深刻だという。

 こうしたしわ寄せが行くのが現場だ。勤続23年のベテラン保育士(43才)が嘆く。

「私が働く保育園には一般企業のような配置換えや転勤がないので風通しが悪く、女性ばかりで嫉妬もあって人間関係が難しい。しかも、最近はモンスターペアレントにも悩まされます。給料が安いのに残業も多く、タイムカードを押して、退社したことにしてから仕事を再開したり、自宅に持ち帰って作業することも多々あります」

 厚生労働省の調査では、保育士としての就業を希望しない理由は「賃金が希望と合わない」がトップ。実際に保育士の平均年収は約326万円で、給与所得者の平均年収約422万円を大きく下回る(2016年)。

 政府は待機児童解消のため保育士の待遇改善を掲げるが、効果は出ていないのが現実だ。保育問題に詳しいジャーナリストの猪熊弘子さんは話す。

「2017年度から保育士の給与を月額約6000円程度引き上げたほか、7年以上の経験がある職員らに4万円の給与アップを実施していますが、まだ充分にこの政策が行き渡っていません。日本はとにかく子供にかける予算が少なすぎます。経済協力開発機構(OECD)諸国の中でも最低ランクです」

 そんな一進一退の状況下で、行政には任せておけないと始まった民間の試みもある。

 その1つが「グランドシッター」だ。これは一般社団法人日本ワークライフバランスサポート協会が認定する民間資格及びその取得者のことで、経験豊富なシニア層が中心となるグランドシッターは、保育の現場で補助作業を行う。

「保育士不足の緩和と定年退職後のシニア層が活躍できる場所をつくるために始めました。2015年のスタート時に比べて、昨年は受講者が5倍に達し、専業主婦が孫の誕生をきっかけに、“保育士さんをサポートしたい”と資格を取るケースも増えています」(同協会の武市海里理事長)

 東京・錦糸町の株式会社Star Japanが運営する認可外保育所「スーパーキッズほいくえん・Ritz」(東京都墨田区)で週4回、グランドシッターとして働く岡本房子さん(61才)はこう話す。

関連キーワード

関連記事

トピックス

氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
公益通報されていた世耕弘成・前党参院幹事長(時事通信フォト)
【スクープ】世耕弘成氏、自らが理事長を務める近畿大学で公益通報されていた 教職員組合が「大学を自身の政治活動に利用、私物化している」と告発
週刊ポスト
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン