2018年3月31日、1996年から続く『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ)が最終回を迎える。2004年10月には33.2%という高視聴率も記録したこの番組の歴史を振り返るとき、初回放送から出演していた極楽とんぼの山本圭一(現在は圭壱)が番組レギュラーを降板、芸人としても引退していたことに触れぬわけにはいかない。復帰し、ふたたびコンビでの活動も増えた。現在のレギュラー番組『極楽とんぼKAKERU TV』(AbemaTV)によって改めて分かった彼らの独自性について、イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が考えた。
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来たる3月31日『めちゃ×2イケてるッ!』21年半の歴史が幕を閉じる。
筆者はアラサー、この世代にとって『めちゃイケ』は特別な番組だ。“バラエティ”を理解し始める10歳前後に『めちゃイケ』の放送がスタート。ちょっと年の離れたお兄さん・お姉さん(開始当時・岡村隆史26歳)の活躍を夢中になって見ていた。
『めちゃイケ』は“バラエティ”でありながら“ドキュメンタリー”。特に、極楽とんぼ・加藤浩次は番組内で私生活をさらけ出した。結婚と出産に母親の再婚、自らの借金返済まで。デリケートな話題も全て笑いにし、視聴者を楽しませてくれた。
なかでも、2016年に放送された極楽とんぼの相方・山本圭壱の復帰SPはすごかった。2006年に淫行事件を起こし、吉本興業から解雇された山本と番組内で対決。格闘技リングの上で、つかこうへいの舞台のようなセリフの応酬。怒り、悲しみ、そして愛が混ざる加藤の言葉が山本に突き刺さる。過剰な対話を見て、「これぞ!めちゃイケ、これぞ!極楽とんぼ」と胸が熱くなった。
『めちゃイケSP』で禊を済ませた山本は、10年ぶりに吉本興業グループのよしもとクリエイティブエージェンシーに復帰。かつての解雇は山本の身から出た錆、コトがコト、極楽とんぼの復活には反発も多い。しかし、この日を指折り待っていたファンも沢山いることだろう。ちなみに僕もその1人だ。
何事にも言えるが、失ってこそ気づく素晴らしさがある。僕にとって、極楽とんぼがそれ。山本が表舞台から消えて気づいた2人の魅力があった。極楽とんぼは、他のコンビじゃ代わりが効かないスタイルを持っていた。
『めちゃイケ』でも繰り広げられたケンカコントを筆頭とした粗暴な芸風。また、謹慎前に根城としていたラジオ番組『極楽とんぼの吠え魂』(TBS)では純度の高い悪趣味な笑いを提供していた。
ある放送のフリートーク。山本は月9ドラマ『ラブ・レボリューション』(2001年放送)のメインキャストに選ばれたことを嬉々として加藤に報告する。それを聞いた加藤は「共演女優をガンガン狙っていけ」と山本に命令。最初は渋っていた山本も加藤に説き伏せられ、
加藤「米倉涼子(共演女優)を抱きてぇんだろ!」
山本「ハイ!」
加藤「米倉涼子を抱きてぇんだろ!」
山本「ハイ!」
とコールアンドレスポンス。
普通の芸人ならば、このやりとりだけで終わる。しかし、極楽とんぼは違う。放送のたびに、加藤は山本にドラマ現場で何が起きたか現状を報告させる。そして毎回、加藤は荒唐無稽な恋愛プランを山本に提示。もちろん応えられるはずもなく、毎度「やったか!」と加藤にドヤされる山本。ドラマ撮影期間中は、このやりとりが何度も行われていた。
最終的に、山本は米倉涼子からドラマ主演の江角マキコにターゲットを鞍替え。番組内で江角に向けたオリジナルラブソングをテープに録音し、本当にプレゼント。もちろん、江角から好反応が来るはずもなく。「共演女優を抱くプロジェクト」は失敗に終わる。