昔からいるけれど、実はその正体が謎のベールに包まれている着ぐるみ。「中の人」はどうなってるの? そこで、着ぐるみ製作とイベントを手がけて40年の老舗企業・リップを直撃。入社以来25年間着ぐるみ製作に情熱を注ぐ製作部長の伊藤歩さんと、製作に携わりつつキャラクターインストラクターでもあり、さらに「中の人」でもある上田欣彦さんの同期コンビが、知られざる舞台裏を明かしてくれた。
上田:スポーツやテーマパークの公式マスコットに入る際には前もって映像を見て、写真でポーズを確認します。マスコットの性格も把握して、ファンに“あれ、いつもと違う”と思われないように注意しています。
休憩中に着ぐるみを脱いでリラックスしたい気持ちもありますが、控え室が遠くにある時や他の人と一緒だったりする時には、何時間でもそのままです。最長で7時間ほど着続けたことがあります。
慣れている現場だと、控え室に入るとスタッフがサッと扇風機を向けてくれる(笑い)。首元をグッとこじ開けて、涼しい風を入れて「みんな、ありがとう!」と。人前で脱ぐことはありません。
〈千葉県船橋市の“非公認”ゆるキャラ「ふなっしー」が時の人となったとき、関心を集めたのは中の人のこと。公式ツイッターではふなっしーは梨の妖精で、中には人など入っていないと説明を続けてきた。“中の人などいない”本当にそう感じさせるほど、中の人はその意識を強く持っているのだ〉
伊藤:例外はあるものの、昔から“おしゃべりはタブー”というのは基本ルールです。子供にちょっかいを出されても、歯を食いしばって黙って耐える。スタッフがガードしてくれる場合はよいのですが、遊園地や街頭に立つ動物の着ぐるみは守ってくれる人がいなくて、さんざんひどい目に遭いましたね。
パンチやキックは当たり前。あざが残るほど全力でグーパンチをされることは決して珍しくないとか。無理矢理脱がされそうになったことも。
上田:「キャラだとやっていい」みたいな雰囲気があるみたいです。頭のかぶりものを取られそうになるのもしょっちゅうで、そんな時も声は出さず、必死で押さえます。「やめて」と声を出そうものなら、「わぁ、しゃべったぁ!」と喜んで、余計に騒ぎ出しますから。でも、最終手段でしゃべることもあるんです。
グイッと子供を引き寄せて、耳元でぼそっとささやく。かわいらしい着ぐるみなので、「つかまえたぁ」みたいな雰囲気を出しつつ、その子にだけ届く小声で、「おい、ええ加減にせぇよ、こら」と。おっさんの低い声で荒っぽい言葉を言うと、ビビって逃げていきます(笑い)。「今、おっちゃんは仕事中やねん!」というのを強くアピールします。
※女性セブン2018年4月12日号