一兵卒としてやり直したい──。貴乃花親方のその言葉を聞いて、相撲協会の執行部はむしろ困惑した。公然と反旗を翻す相手なら厳しく罰すればいいが、“一員としてやり直す”と言っている相手に、どのような処分を下せばよいのか。そして、貴乃花の職務を「審判部」に配すという“辞令”が出た。協会内の人事を掌握する執行部は、100人以上いる親方衆の「職務分掌」を差配する。
「わかりやすい“閑職”としてあるのが、監察委員です。無気力相撲を取り締まる担当ですが、実際のところは本気で仕事をしてもらっては困る部署。国技館では客席最上段に監察委員専用の部屋があり、モニターと目視で“監視”すべきところ、担当の親方が土俵をほとんど見ずに漫画雑誌を読みふける姿がよく目撃されている。
貴乃花親方は現役時代から『ガチンコ至上主義』で知られる。監察委員として、手当たり次第に無気力相撲だと摘発されても困る。その他にも、指導普及部に配して場所中に木戸番(チケットのもぎり)や館内の警備担当といった“下働き”をさせる手もあったが、貴乃花親方の場合はファンが群がって人気者になってしまいそうだから難しい」(若手親方の一人)
“ちょうどいい閑職”が見当たらなかったのだ。
結果、「審判部」に落ち着くことになったのは、「執行部が考え抜いた上での差配」(同前)だという。
「土俵下に座ってお客さんの前に長く顔を見せる審判部は花形部署とされています。ただ、仕事内容はかなりハード。特にヒラの審判員は本場所中は早朝から会場に詰め、割を組む(翌日の取組を決める)仕事や、場所後の番付編成も担当する。決まった時間に出勤しないといけないので欠勤すればすぐにわかる。一方、テレビ画面からも仕事ぶりが見えるので、ファンから“冷遇している”と批判を受けることもない」
※週刊ポスト2018年4月13日号