京都・嵯峨野。桜を求める観光客の喧噪も届かないほど奥まった場所に「寂庵」はある。門をくぐり、草木が生い茂る庭の石段を上った先で笑顔で迎えてくれたのは、その寺院の庵主、瀬戸内寂聴さん(95才)だ。
新聞や週刊誌は隅々まで目を通し、政治、経済から芸能スキャンダルにまで精通する。元外交官の小池政行さん(67才)が、瀬戸内さんが今の世の中に抱く思いに迫った。
──実は私は、成蹊中学・高校の出身で、安倍晋三首相の先輩にあたります。2度も首相の座について、長期政権を築いた安倍首相が、今揺れています。森友問題、特に首相夫人の昭恵さんのことです。
「とても天真爛漫で、チャーミングな女性ですね。森永製菓の創業者一族に生まれ、“蝶よ花よ”と何不自由なく育てられたんでしょう。だから、とても純粋な心の持ち主なんだと思います。騒動に巻き込まれたのは、キャラメルで甘やかされて育てられ、人を疑うことを知らない昭恵さんの性格もあったかもしれません。
彼女が使っていた『家庭内野党』という言葉は斬新で、新しい時代の妻のあり方を作り出したと思います。妻は考え方を全部夫に合わせなきゃいけないなんてことはありませんから」
──これまでの日本のファーストレディーのイメージは、“陰で夫を支える”というものでした。
「女性が自分の生き方を前面に出すことはとてもいいことです。でも、昭恵さんが外の世界に目を向けるようになったきっかけは“家庭に満足できていなかったからじゃないか”と思うんです。
政治家一族には跡取り息子が求められますが、安倍さん夫婦には子供がいません。昭恵さんはそれをすごく気にしているといわれています。彼女には“夫との関係”に満たされない部分があったんじゃないかしら。だから、ますます外に出て行くようになって、そうしたら純粋な性格につけ込まれてしまったんでしょう。
彼女には確固とした思想があるわけではなく、感覚で生きているところがあります。私も感覚だけだから、昭恵さんのことがよくわかります」